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素人による創造
378383 真似るからオリジナリティが生まれる
 
匿名希望 22/06/23 PM09 【印刷用へ
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「能」といえば、その源流にいるのが「観阿弥」(かんあみ)、世阿弥(ぜあみ)です。ふたりは親子ですね。
父「観阿弥」の教えを元に世阿弥が書いた『風姿花伝』は有名です。私たちがよく口にし耳にする「初心忘るべからず」は、『風姿花伝』に書かれてあった言葉です。

 『風姿花伝』は、いくつかの出版社が本にしていて、今も読むことができます。そのひとつ、岩波書店が出版している『風姿花伝』の表紙には、こう書かれています。
室町時代以後日本文学の根本精神を成していた「幽玄」「物真似」の本義を徹底的に論じている点で、堂々たる芸術表現論として今日もなお価値を失わぬものである。
『風姿花伝』には「物真似」という言葉が、繰り返し出てきます。わかりやすいので『現代語訳 風姿花伝』(水野 聡 PHP研究所)から引用してみます。

「名人ぶった芸をひけらかすなど何ともあさましい。たとえ人にほめられ、名人に競い勝ったとしても、これは今を限りの珍しい花であることを悟り、いよいよ物真似を正しく習い、達人にこまく指導を受け、一層稽古にはげむべきである。」

 『風姿花伝』の、今でいう第二章は「物学條々」というタイトルです。この「物学」と書いて「ものまね」と読むのです。「物学條々」(ものまねのじょうじょう)は、こう始まります。

「物真似の品々は、筆には尽くしがたい。とはいうものの、この道の肝要なのでこれらの品々をくれぐれもよく嗜(たしな)むべきである。おおよそあらゆるものをすみずみまで、そのまま真似ることが本意である」

『現代語訳 風姿花伝』(水野 聡 PHP研究所)
 「物学」の脚注には、「物真似の語源、すなわち〈ものまねび〉である」と書かれています。『風姿花伝』』は室町時代の書物です。「真似る」が「学ぶ」に通じることは、古くから言われてきたのですね。


「真似る」からオリジナリティが生まれる
 白洲正子さんが、世阿弥について記した本『世阿弥―花と幽玄の世界』(白洲正子 講談社)の中に、こんな言葉をみつけます。
「世阿弥を育てたのは、まったくこの物真似の精神に他なりません。独創ばやりの世の中では、真似とか模倣とかいうことは、えらく落ちぶれてしまいましたが、本来それは学ぶから出た言葉で、まなぶ、まねる、まね、という風に変わって行ったと聞きます。だから、「物学」という字を当てて、ものまねと読ませているのですが、近頃、独創がしきりに叫ばれているのも、本気で学ぶ気持を失った為か、と勘ぐれないこともありません。(中略)

模倣も極まれば独創を生むことを、身をもって示す結果となりました。
そうなんですね。どうも現代語として「真似」という言葉は、「学ぶ」よりも低レベルに受け取られがちです。誰かを「真似る」というと、「それパクリでしょ」「受け売りだろ」と批判されかねません。

 ただ、能がそうであるように、武道でもスポーツでも、経営でも、リーダーシプでも、誰かを「真似る」ことで、自身の技量を高められることは、室町時代でも今も変わらない真理です。

「型」があるから「型破り」ができる
 文章の技量を高めようとしたら、小説家や作家の名文を書き写してみる。これは定番の文章上達のノウハウです。真似てみると、その作家独自の「型」を感じ取ることができます。その「型」と自分の「型」を混ぜ合わせていくことで、さらに独自の「型」が生み出されてきます。これが独創です。

 まず「型」がある。これを破っていくのが「型破り」です。「型破り」が独創性につながります。そもそも「型」がなければ「破る」ことができません。これを「形なし」(かたなし)といいます。

 「形なし」の意味は、「本来の価値が損なわれ、何の役目もしなくなる・こと(さま)」(三省堂「大辞林」第二版)です。「台無し」と同じ意味です。

「形を持つ人が、形を破るのが型破り。形がないのに破れば形無し」

 上の一文は、早逝された歌舞伎界の名優中村勘三郎が、よく口にしていた言葉として広まっています。もとは禅僧「無着成恭」の言葉だと、『朝日新聞デジタル「仕事力」』の中で、勘三郎さんが書いていました。

 型をもつためには、真似ることです。真似るから型ができ、型破りとなって独創性を発揮できます。
 
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