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生物の起源と歴史
374299 ダーウィン進化論に代わる新しい考え方「エピジェネティクス」2〜獲得形質は遺伝する〜
 
田中拓帆 ( 青年 大阪 ITエンジニア ) 22/01/25 PM11 【印刷用へ
以下、リンクより引用

エピジェネティクスが発見された舞台は、ノルウェー北部のノルボッテンと呼ばれる場所です。

過疎地&都市部との交通が困難であったために、19世紀ごろまでは凶作のたびに深刻な飢餓に見舞われた地域です。協会区の記録によれば、1800年、1812年、1821年、1836年、1856年に深刻な凶作による飢餓が生じていたそうです。
しかしそれとは対照的に、このノルボッテン地区は豊作も多く体験しています。1801年、1823年、1828年、1844年、1863年には豊作が起こり、過食による健康被害が増加した地域でもあります。
予防医学の専門家であるラーズ・オロブ・バイグレンという人物が、このノルボッテン地区の凶作と豊作の繰り返しが、住民の健康状態に、どのような影響を与えたのかを調査しました。
ある集落で1905年に生まれた住民99人をランダムに選んで調査したところ、幼少期にある冬は飢餓、次の冬は飽食という経験をした子供やさらにその子供が、総じて平均より短命になり、最大で33年も平均よりも早死にするということが明らかになりました。つまり、子供のころに飢餓と飽食の年を両方とも体験した人の体内で、何らかの生物学的な変化が生じて、その変化は次の世代、さらにその次の世代へと引き継がれるということです。

その中でも特筆すべき研究は、イギリスのブリストル大学の疫病学者であるジーン・ゴールディングが主体となって行った「エイボン親子研究」というものです。この研究は1991年と1992年に、約1万4000人の妊婦を対象にして、その後の親子を追跡調査したものです。

追跡調査の結果を詳しく分析してみると、11歳以前に喫煙を開始した父親の子供は、性別に関係なく肥満度を表すBMIの値が9歳の時点で極めて高かったことが明らかになりました。

そして幼少期の時点でBMIの値がすでに高かった子供は、肥満や糖尿病を発症する確率が高いことも明らかになりました。つまり、親の喫煙や食生活などの生活習慣は、その次の世代まで影響を及ぼすことが、また明らかになったのです。
科学者たちは、親が過ごした環境的な要素が遺伝子に何らかの刻印を残すのではないか、と考え始めました。これがエピジェネティクスという概念の始まりです。
エピジェネティクスの発見がもたらした変化エピジェネティクスの概念が発見される前は、遺伝子は何世代もかけてゆっくりと、しかし着実に変化を起こすという考えが主流でした。
現在では環境が、遺伝子配列や遺伝子がもたらす作用に急激な変化を与えるという考えが主流になっています。

ではエピジェネティクスはどの範囲でどれくらいの間、遺伝子に影響を与えるのでしょうか。スイス連邦工科大学のレナート・パロがミバエというハエの一種の卵の温度を、25度から37度に少しの間上昇させただけで、遺伝的には白い目をもって生まれてくるはずのハエが赤い目をもって生まれてくるようになることを実験によって明らかにしました。さらに驚くべきことに、この赤い目のハエを通常の白い目のハエと交配させたところ、その後6世代にわたって、ずっと赤い目のハエが生まれ続けることが明らかになったのです。
つまり、エピジェネティクスは約6世代後の世代まで影響をもたらす可能性が示唆されたのです。赤い目のハエも、白い目のハエも、遺伝子の配列に変化はなかったのですが、卵の状態の温度を少し変えるだけで、遺伝子配列がもたらす作用が変化し、6世代後まで目の色の変化をもたらしたのです。


ではハエではなくマウスの場合はどうでしょうか?ペンシルベニア大学の神経学者であるトレイシー・ベイルが行った研究によると、妊娠しているマウスにジャンクフードのような高脂肪の餌を与えたところ、そのマウスから生まれた子供は、誕生時からすでに体重・体長ともに平均を上回り、インスリンに対する抵抗性が低くて、糖尿病と肥満へのリスクが高いことが分かりました。
そしてこの子供が成長したときに、通常の餌を与えながら妊娠して生まれた子供は、体重と体長が平均を上回り、インスリンに対する抵抗性が低かったそうです。さらにもう2世代後まで、通常の餌を与えたのにも関わらず、体重が重くて食事を多く食べるマウスが誕生したそうです。マウスの場合もエピジェネティクスは確かに働いているようなので、人の場合も働いていると考えて良さそうです。

さらに食生活だけでなく、記憶などの脳回路の形質においても、エピジェネティクスは働くようです。タフツ大学の生物科学者のラリー・フェイグが記憶障害を持つように遺伝子的に誘導されたマウスに、運動用具などのマウスの関心を惹くものを多く備えた環境で生活させたところ、そのマウスの記憶力が大きく向上しただけでなく、神経細胞の情報伝達効率が高くなるような現象が見られました。そしてその現象は、このマウスの子孫がごく普通の環境で育てられたのにも関わらず、子孫でも維持されたことが明らかになっています。つまり、脳を鍛えることによって起きた神経細胞同士の結合の変化が、子孫へも引き継がれることが示唆されたのです。
簡潔に言えば、賢い親からは賢い子供が生まれ、逆もまたあり得るということです。
これらのエピジェネティクスによる遺伝子配列や遺伝子がの与える影響の変化は、メチル化というものによって起こされるのですが、専門的な話になってしまうので割愛します。

また人の場合でも、出産前に抑うつを体験していた母親から生まれた赤ん坊を生後3か月に調査したところ遺伝子レベルでの変化によって、抑うつを体験しなかった母親から生まれた赤ん坊よりも、明らかに多くのストレスを感じて、ストレス耐性が低下していることが明らかになっています。

数世代前の親の幼少期の体験から遺伝子レベルで強い影響を受けており、私たちの幼少期の体験は、体内で遺伝子レベルの変化をもたらし、その変化は数世代後にまで引き継がれる。

これがエピジェネティクスです。
 
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