矢野さん、永田さん、トリブリアンド島の事例、たいへん参考になります。以下の点についても、観察、見解などありましたら教えて下さい。
トリブリアンド島以外に、オーストラリアのカミラロイ族やハワイでも見られた交叉婚は、兄妹婚をとっていた採集生産部族が、生産力の上昇に伴い人数規模が拡大する過程で、兄弟婚をアレンジしてできた様式だと考えています。
〜もとは、ひとつの氏だった“部族”が縄張り拡大に伴って、母系でたどれる血縁を基準に “氏族” に分割し、その中で兄妹婚を踏襲していた。〜が、世代を経ると、他氏族間の交流が減るので、氏族単位での閉鎖性が強まるとともに、部族としての統合力が下がってくる。〜ここで改めて、部族としての統合力を高めるために、氏族内の兄妹婚を禁止し、(部族内かつ他氏族の兄たちと妹たち=)従兄たちと従妹たちとの婚姻を規範とした。〜という具合です。
ここで私が驚いたのは、採取時代の人類は、男女の婚姻関係・性関係が、“集団統合上の重要課題である”ことを、ごく当たり前のように認識していたと思われることです。
現在の男女関係は、その大部分が個人の自由に委ねられており、一見、これとは無関係に社会は成立しているように見えます。しかし実は、現在も社会を最基底部で規定しているのは、採取時代と同様に男女関係なのではないでしょうか?
もう1点着目しておきたいのは、交叉婚でも婚姻相手の単位は“個人”ではなく、“集団”であるという点です。採集生産系の民族では、その後、私財(権)の発生に伴ない姉妹集団が個人に分断されてきますが、それまでは、男女関係においても“私”が集団統合上の問題として登場することはなかったのでしょう。
上記の捉え方については、ほかの婚姻様式でも検証・対比していきたいところです。
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