>>(匿名希望さんの3861)「武器・道具の発明・発見(利用開始)+社会の形成→樹上にすむ必要が無くなる(外圧の低化)→足の指の退化」と考えるのが自然ではないかと思うのですが、どうでしょう?<<
に対して、野田雄二さんが3909で観念機能の発達がなければ武器・道具の発明・発見はない、従って観念機能の発達を促した過酷な生存圧力(具体的には足の指が先祖返りして樹上に棲めるという武器を失った)をまず想定しなければならない、とされている説に同意します。
また田中素さんも4079で、
>厳しい生存条件と闘う中でヒトは直立へと向かい、それが脳容量の増大や言語を発しやすい咽喉の構造変化を促して、知能と社会の発達が実現しました。<
と言われています。
この延長で、野田さんの以下の論点について考えたいと思います。
>従来の考古学者の説では、二足歩行を始めることで手が自由になり、道具を使う手の発達が脳の進化をもたらしたとするものが多いようですが、実際に人類が特に発達させている脳の領域は、観念機能の領域であり二足歩行→道具説は信憑性が低いと思われます。<
まず二足歩行についてですが、ナックルウォークと比較して歩行速度の落ちる(少なくとも当初は骨格・筋肉等が適応していないのでぎこちなく遅い)二足歩行に敢えて移行したのは、逃避行動を選択するより生存適応度の高い、手で棒きれ等の武器を持つ、さらに直立・手を広げることで威嚇効果が増す、遠くまでの視野が広がるといった効果を選択した結果だと考えます。さらに、極限的な不全感を解脱する必要性は逼迫しており、直立歩行訓練という単純なリズムでの足踏みは格好の解脱様式でもあり、同時に戦いの前の戦闘意欲を奮い立たせるものにもなったでしょう(足を踏みならす踊りは現存の未開部族にも踏襲されています)。
従って、初めから脳容量を増大させて、観念機能を発達させるという目的意識はなかったと思われますが、直立することにより脳容量の増大を支えられる身体的構造を獲得したこと(しかしこれは必要条件に過ぎない)、直接的には根源的な適応欠乏に導かれて、唯一残された武器である共認機能(サルの知能進化もこれによる)をフル回転させたことが、脳容量の急速な増大をもたらしたと考えられます。
因みに直接の先祖であるチンパンジーの脳容量は約400cc、300万年前のアウストラロピテクスが540cc、200万年前のホモハビリスが600cc(旧石器を使う)、170万年前のホモエレクトゥスが800cc(旧石器を使い、史上初めて火を用い簡単な言葉もしゃべれたらしい)、25万年前のホモサピエンスが1200cc、そして現在1300cc。これだけの急速な増大は、手が自由になり道具を使うだけでは説明困難な気がします(サルと比較してそれほどの飛躍はないからです)。やはり共認機能をフル回転させ、人類独自の観念機能を獲得する過程が主因でしょう。人類がいかに脳(本能→共認→観念)に依拠して生存しているかは、体重の2%しかない脳の消費エネルギーが、摂取エネルギーの20%にも達する点からも窺い知ることができます。
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