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「祭り」の多面性と核心 |
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三ヶ本万州夫 ( 壮年 兵庫 講師 ) |
02/06/02 PM10 【】 |
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祭り自体、その意義・目的・様式など、歴史的に何層にもわたり塗り重ねられ、変遷をたどってきました。従って「祭りとは?」という問いに対する答えも多様です。ここでその解答のいくつかを紹介します。
1・祭りの意義は、世界の始まりの時間を神といっしょに過ごすことにある。祭りの中での、人の時間ではないとき、ケ(日常)の正気や秩序を失うとき、人は神の世界にいる。本来の祭りのクライマックスは、酔いつぶれることである。カオスであり、神に近づくことなのである。一晩中、踊り明かす神憑かりの時間である。 ハレとは、日常(人の秩序)を超えた時間、神の時間である。そして、祭りとは神話の再演であり、世界の死と再生なのである。
2・本来動物の本能とでもいうか、心と体に鼓動を呼び起こし共に共振して、個々の集まったエネルギーをぶつけ合うことにより、理屈ではわからない自然の力によって、みんなで良い方向に生きようとする儀式である。
3・祭りは「神を供応する」心から出たもので、神とともに自分たちも楽しむものなのである。それは神をもてなし、神が楽しみ、その恵みを受けながら人々も楽しむのである。
4・祭りとは「祀る」ものである。祀る対象があって、そのために祭りをするのである。対象をあがめ、讃え、鎮魂し、そして一体感を得るために、血わき肉おどらせるのである。
5・祭りは惰性的嫌悪感にみちた生活という日常の対極にある、つかの間の非日常世界である。現実という見える世界をとびこえて、見えざる非日常世界へと遊泳できるのだ。そこには夢や希望や、ロマンや、ノスタルジアや、エロスや、デーモンや、ありとあらゆるものが混在している。祭への参加者は、その摩訶不思議な非日常空間に身をゆだね、自己忘却し、自己解放をはかろうとするのである。
6・「まつる」とは、神に捧げ物をたてまつり、まつらう(おそばに待ち侍る)ことである。そうするためには「みそぎ」「こもり」によって心身を十分に清めることが必要であった。村の祭りは村中で行なうものである。祭る神は共同体の神である。各人の願いを祈るのが祭りではない。村の共同の願いを、定められた機会にだけ、神に再確認するのが祭りである。願いを神に押し付けたりは決してしない。また、神は祭りのときにしか居ないし、来ない。祭りを執り行う者、つまり祭祀権をもつ者こそ、太古の首長であった。ただの神主ではない。そしてこのリーダーのもと行なうのが祭りなのであった。 長い斎みこもりのあと、来臨した神を祭祀者が中心になって共同体メンバーみんなで迎え、たてまつりまつらい、共同の願いを再確認するのがお祭りだということになる。
7・そもそも「祭り」は古代の「政」(まつりごと)に端を発する。「政」は神々を「奉る」厳粛な儀式でもあった。人々は営みの全てを神に委ね、祭りを通して災いを振り払い、吉事がも たらされるよう祈願し、同時に神々とともに酒を酌み交わすことで邪念を取り払い、明日への糧としたのである。
8・もともと祭りとは、人間のライフサイクルにおける刷新の役割を果たすものである。どの民族にも、その形態はさまざまに違っても、年ごとにめぐってくる祭日を祝い、過去の自分を捨てて新しい生命力を回復する契機とする、という習慣がある。それは、人間の本性に共通に備わっている欲求からくるのだろう。
9・祭りは基本的に神を奉るものとされているが、柳田国男民俗学によれば、神とは基本的に有難きもの、つまり滅多にないもの・・・として存在し、神とは基本的に荒ぶる神としてとらえられていたようだ。祭りとは、荒ぶる神を静める行事であった。
10・“祭り”とは、人々が日常を離れ、その一瞬に日頃の憂さや体内に溜まった悪いガスを吐き出し、次の日から、また新たに日常を生き直す為のモノである。
11・祭りにおいて、自分の子供を神に捧げる事もあったが、それは酷い事ではなく当然の「モラル」であり、祭りの中の狂気は最高の恍惚感を与えていたのである。 時にカニバリズム(人肉食)すら容認する”祭り”とは、正しく我々の精神を抑圧から解放し、最高のカーニバル(謝肉祭)に誘うものかもしれない。
12・祭というものは本来3つの機能がある。一つは、喧噪。誇大なる喧噪、要するに大騒ぎ。それから一つは過大なる消費、ものすごくお金やものを使う。もう一つは性的な放埒さ・性的開放である。
「祭り」の多面性がうかがえますね。これらの中から、農耕社会以降現代までに付加された要素を取り除いていけば、祭りの本質が浮かび上がってくるのではないでしょうか。その核心は、人間の集団的生存という最もベーシックな存在様式を、鮮烈な形で繰り返し共認し合うことにあるように思えてなりません。
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