264099の続きです。
ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則リンクより転載します。
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PIIGS債の危機の先頭に立っていたギリシア債は、現在でも長期金
利は25%という高さです。
ただしPIIGS債の3月危機は、
(1)ECBのマネー供給(昨年12月と12年2月の合計で100兆円規模)
と、
(2)ギリシア債の債務カット(ヘアカット:約70%)によって、
回避されたと見られていました(12年3月)。
その後に、浮上したのがスペイン債とイタリア債の危機です(金利
の、再びの高騰)。つまり、スペイン債とイタリア債の売りです。
▼スペインを例に言います。(イタリアも似ていますが・・・)
スペインの国債残(公的債務とも言う)は、GDP($1.4兆:112兆
円)に対し68.5%の77兆円です。
GDP($3400億:27兆円)の150%の国債(40兆円:11年末)を抱え
るギリシアより少ない。
ユーロと米国の金融機関は、ユーロであるため為替リスクがないの
に金利が高いギリシア債を、好んで買っていたのです。しかも、ギ
リシア国債の残高は40兆円しかなく売買市場も小さいので、少数の
プレヤーが、少ない資金で相場を動かすことができたのです。
ユーロ高のため、ギリシアは、財政赤字を続け、高い公務員報酬と、
現役時代の90%の所得になる年金を払うことができていました。統
一通貨のユーロに属しているということが、ギリシアに財政赤字を
続けさせたと言っていいのです。
ギリシアが固有通貨のドラクマなら通貨が下がって、ユーロ建ての
ようにはギリシア債は売れず、政府の財政赤字にもブレーキがかか
っていたでしょう。ギリシアはユーロに属したため、財政破産した
と言っていいのです。
ギリシアをユーロに入れたことは、EU(欧州経済連合)の誤りだっ
たのです。しかし、この誤りは、PIIGS 5ヵ国に共通したことです。
各国の税制と経済を統一しないままのユーロという仕組みそのもの
が、歴史上の誤謬でした。
EUは、これを認めたくない。このため、外部に向かっては、いつも、
南欧債の損失見積もりでは「粉飾(ドレッシング)の発表」をして
います。
▼スペインの問題は、国債より民間債務(GDP比220%)
●スペインの問題は、民間法人と世帯の債務が、GDP(112兆円)の
2.2倍(250兆円)もあることです。
大半は、国外の金融機関からの借金です。国債と合わせれば、GDP
比で2.9倍(327兆円)の負債です。(注)1ユーロ=105円換算
スペインも、高い通貨ユーロに属したことで、ドイツ債より金利は
高くても、金融機関がユーロを信用し、買っていました。
このため政府・事業法人・世帯の合計で、国民所得の2.9倍もの負
債を抱える結果を生みました。住宅も、1990後期のユーロ前に比べ、
ユーロが高くなったこともあって、3倍には上がっていました。
借金は増やせる間は、仕合わせです(信用の拡大)。
企業も世帯も、働いて儲ける以上のお金が使えます。
ところが返済と利払いが上回る時期になると、突然、苦しくなる。
所得から、利払いと償還金を、支出せねばならないからです。金利
の高騰は、新規の借金が、困難になっていることを示します。
所得の10%を、毎年借り増しができる時期と、10%を返済せねばな
らない時期には、20%も差が生じます。しかもPIIGS債のように、
返済を迫られる時期は、例外なく、信用不安で金利が上がっていま
す。
信用不安とは、大きくなった財政赤字のために必要な、新規債が売
れなくなることです。このため、「利払いも返済もできなくなる」。
以上のため、スペイン債、イタリア債、ポルトガル債が、市場で売
れる(金利が下がる)と「ニュース」になるのです。
スペイン国債の長期金利は、ほぼ6%です。国債の金利は、その国
でもっとも低いものです。民間(企業と世帯)の長期債務(250兆
円)の金利は、おそらく8%以上でしょう。
(1)政府による国債の金利払い=77兆円×6%=4.6兆円/年です。
(2)民間債務の金利払い=250兆円×8%=20兆円です。
合計では、25兆円もの利払いになります。
GDPが112兆円ですから、[利払い25兆円÷112兆円=22%]です。
国内総生産(GDP)の22%が、利払いに消えます。(注)長期の財
政を言っています。
国内総生産は、所得面では企業所得と世帯所得(国民所得)です。
この所得の22%も、利払いができるでしょうか。
世帯で言えば500万円の年収の人が、110万円の金利払いをせねばな
らない。サラ金で借りたようなものです。これが、スペインの、平
均的な家庭の家計です。民間負債がGDPの2.2倍ということの、金
利面での意味がこれです。
借り手が、金利を払えない借金は、貸し手の金融機関(ユーロで主
要19銀行)にとって不良債権になります。このため、スペインとと
もにドイツ・フランスの金融機関が破産するのです。
▼不良債権は公称の2〜3倍はある
スペインを含むPIIGSの不良債権は、EU当局や南欧諸国が公表する
金額の、2〜3倍はあると見ておいて間違いありません。現在は、
ECB(欧州中央銀行)が利払いのために、「必要な金額の追い貸
し」をしていますから、事実上の不良債券も、公称では不良ではな
いとされています。不良債権の確定は、債券がデフォルト(支払い
不能)になるまで、不明なのです。
スペインは、ユーロに属するため、自国通貨(ペセタ)は発行でき
ません。フランクフルトにあるECB(内実はドイツ中央銀行)から、
ユーロを借りるしかない。フランスの銀行は貸す余力がないからで
す。
▼ユーロの銀行の自己資本比率の低さ
ユーロ地域の全銀行の自己資本は、リスク資産の、わずか4%しか
ありません(Finacial Times紙:12.04.25)。
不良債権の発生に対し、脆弱(ぜいじゃく)なのがドイツ、フラン
スを含むユーロの銀行です。このため、スペイン債のデフォルトだ
けでも、支えることができない。
参考のために言えば、英国の銀行の自己資本は5%、米国の銀行は
6.6%で、国債を除いたリスク資産のレバレッジ倍率が15倍です。
米欧の全部を合わせても、自己資本は200兆円しかない。
(注)日本の銀行の自己資本が、約100円です。
▼結論
以上の意味は、ギリシアについでスペインも政府、民間が同時に、
破産しているということです。もし名目GDPが469兆円の日本が、そ
の22%(103兆円)の利払いが必要となると、払えずに破産です。
スペインにとって、これと同じ重みです。
日本は、長期金利が0.88%と1%以下であるため、政府負債が
1000兆円でも助かっています。
市場で、新規債50兆円、借換え債150兆円の国債が売れにくくなっ
て、3%の長期金利に上がると、日本政府も、即刻、財政破産しま
す。イタリアを追うと見ていいのが、日本の国債と見ています。
(注)金融市場の(共同幻想による)認識は、まだ、「スペイン破
産」ではありません。
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続く |
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