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地震の発生メカニズム「熱移送説」の紹介(2) |
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引き続き、「熱移送説」の中身を紹介してゆきます。
角田氏の著書『地震の癖』より
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●地球誕生とマグマの形成
地震が起こる原因は、マグマなどを勢いづかせる「熱」であると、第1章で述べました。
現在の地球を動かす動力源は熱です。熱がマグマを生み、地球をつくってきたといっても過言ではありません。
そこで本章では、主役である熱とマグマの活動の歴史を見ていただきたいと思いますが、まずは地球ができた過程から説明していきましょう。その過程への理解が、「地震の癖」を知るためにきわめて重要な意味を持つからです。
約60億〜45億年前、マイナス250度以下の宇宙において、いろいろな元素、岩石の元となる塵を巻き込んだ雲ができました。宇宙に漂っていた元素が、超新星爆発や近くを恒星(星)が通過することで揺さぶられ、お互いに重力で引き合いながら、中心に集まってきました。
雲の中心の質量が大きくなると、自ら光り始め、原始太陽がつくられます。原始太陽のまわりを回っている塵は、重力と遠心力が釣り合うように円盤を形成し、塵はお互いに衝突をくり返しながら大きくなり、惑星の素となる微惑星(隕石の集合体)に成長します。それらが何度もの大衝突をくり返してくっつくことで、地球が誕生したといわれています。
しかし、現在の地球表層では、地球誕生以前の隕石でできた岩石層がまったく存在しないというのは少し変な話です。
つまり地球という惑星の歴史の中で、隕石の岩石層が溶かされるような「大事件」があり、現在の地球に存在する岩石のつくり替えが、必ずどこかで起きたということです。
まずは、地球の外側に集められた水素などの軽い放射性元素が熱を出し、「燃える地球」になってつくり替えが行われたのだと考えられます。このようにして、最初の地球の殻・始原地殻ができたのです。
しかし、水素などの軽い放射性元素は、数億年で燃え尽きてしまいます。そのため、地球表面の隕石が焼き直された時代も、数億年で終わってしまいました。
その後は、地球にある鉄やマグネシウムなどの重い放射性元素が燃え始め、天然の原子炉をつくり、ゆっくりと長く熱を出し始めました。その天然原子炉が6000度で溶け、地下3000〜4500キロメートルにある外核をつくり、いまも燃えさかっているとかんがえられています。
地球の中心(外核)が溶けていることは、自転軸が横ブレすることでわかります。たとえば、中に空気しかないボールはスムーズに転がりますが、水を入れたボールは、ややふらつきながら回転するでしょう。地球も、内部に溶けた部分、液体が存在するために安定した回転ができず、自転軸がふらついているのです。
●昔ほどマグマの生産量は多かった。
放射能を出して別の元素に変わっていく放射性元素は、その存在比率が宇宙規模で決まっています。大気のような気体やマグマみたいな液体では、常に元素の入れ替えが起こり、この比率を一定に保っています。
しかし、マグマが冷えて固まって岩石になると、岩石中に閉じ込められた放射能元素の入れ替えができなくなり、その比率は時間ごとに一定の割合で変化していきます。そこで、岩石を燃やして気体にし、変化した放射性元素を数えて比率を求めます。その比率から逆算すると、その放射性元素が、岩石内に閉じ込められてからの時間の経過を求めることがDきます。
この時間がすなわち、「岩石の年齢」です。こうした放射性元素は、地球史的な時間を計る「地質時計」とも言われています。
「地質時計」を使うと、「数十億年前からマグマが増えたのか減ったのか」など、マグマの歴史を確かめることができます。
元北海道大学教授で日本の地質学界を代表する研究者である故湊正雄氏は、東アジアで、地下から出てきたマグマがそのまま固まった岩石、噴き出して火山灰層などになった地層、それらが風化して削られてできた砂などの地層、生物の遺骸が固まってできた地層などの時代・分布量を調べました。
その結果、35億〜19億年前の岩石・地層は、ほとんどがマグマ由来の岩石の岩石(火成岩)と火山灰層でした。しかし、18億〜13億年前の地層では火山灰層が急速に減り、12億〜8億年前の地層では、火成岩と火山灰層の両方とも激減していたのです。
これらのことから、「地球史の初めの時代ほど、マグマ生産量が多い」ということがわかります。
赤くドロドロに溶けた1000度のマグマは、噴き出して溶岩になり、冷えて黒ずみ、流れながら固まります。25億年以前の火成岩のほとんどは、溶岩と同じように流れながら固まっています。そしていまでは、その残骸といえる岩塊と地層が、地球最古の部分(楯状地)をつくっています。
楯状地とは、先カンブリア時代(地球形成から約5億7500万年前まで)の火成岩や地層が露出している地域のことで、ローマ時代の楯を伏せたような形をした、比較的平らな場所を指します。
火成岩を大量に噴き出すには、「スーパープリューム」のような高温湧昇流が必要なはずです。大量の火成岩からなる楯状地があるのは、そうしたスーパープリューム」の熱量が、楯状地の数だけあったためと思われます。
その後は、湊氏のデーターから「マグマ生産量の減少があった」と推定されるので、スーパープリュームの数も少なくなってきたと予想できます。
●地球最古の地震はいつ?
珪酸が多いほど、マグマに粘り気が出てきます。地球史では、粘り気の少ない玄武岩質マグマが最初に湧き出し、次に粘っこい花崗岩質マグマが湧昇したといわれています。
地殻変動は、そうしたマグマが湧昇してきた後で発生します。前半の玄武岩質マグマは粘り気がないので、湧昇して横に広がります。地殻は引き延ばされて薄くなって沈み、海ができます。さらに、引き延ばされた地殻は、長い割れ目ができたと思われます。
しかし、後半の花崗岩質マグマは粘っこく、近くを押し上げながら湧昇します。地面は盛り上がって陸をつくり、地殻は押し曲げられて、切られたり曲げられたりの破壊・変形を受けます。第1章で少し触れた、マグマが「主犯」であり地殻変動はその「共犯」、という図式は、地球史のかなり早い段階からあったということです。
大地震は、硬い岩石層が長い距離にわたって割れたり、裂けたりしたときに起こります。
25億年より古い時代には、マグマが流れながら固まったため割れ目ができにくく、大地震はほとんど起こらなかったと予想されます。
しかし、25億〜20億年前の地層では、マグマが硬い岩石層を押し破って出てきたことが確認されています。こうした場合、大地震が発生するのは確実です。だから、「地球で最初の大地震は20〜25億年前ごろ起こった」といえるのです。
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(3)に続く |
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