言語の有無は直接証拠が残らないので推測するしかないのですが、アウストラロピテクス属から脳容量が倍増した約200万年前の前後は、かなり注目すべき時代のように思います。
現生人類に至る約500万年の間に、現在知られているだけで20弱に上る「ヒト科の種」が盛衰を繰り返していたことが分かっています。特に、この200万年前から前後100万年間は、現在のチンパンジーなどと比べてもかなり知能が高かったであろう4〜5種のヒトが同時並存していた可能性も考えられるのです。
前出のホモ・エルガスターは、「二次的晩熟性」と呼ばれる肉体的変化を遂げています。これは、母体に負担をかけずに大容量の脳の成長を実現するため、脳が極小の状態で新生児を生み、出産後の1年間に急速に脳成長させるもので、現在では人類のみに見られる成長様式です。
また、約180万年前のホモ・ハビリスと同定された化石の中には、手が長く足が短いという樹上適応型の体系に逆戻りした個体も見つかっているようです。
種間闘争圧力の時代とみるか、適応放散の時代とみるか微妙なところですが、言語能力をはじめ、僅かな知能の差が淘汰圧となって、現生人類に至る進化の方向性を決定付けたのがこの時期と言えるかも知れません。
参考資料:「神に迫るサイエンス」角川文庫、
「複雑化する人類進化の系統」朝日総研リポートNo.150 |
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